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今日の jimon:太陽の帝国ムーは……・その3

太陽の帝国ムーは……・その1、その2のつづきです。前回は、竹内均さんと角田忠信さんの本のお話。プレートテクトニクスの「権威」が、「日本人はムー大陸から来た」と書いておられるということと、耳鼻科のお医者さんが、日本人の脳は世界の中でも特殊な構造で、共通するのは、太平洋の島々の人々だった……という研究の紹介でした。jimon作品の解説から、話はふしぎな広がりを見せて、日本人のルーツや太平洋と日本列島の関係まで……今回は、ハワイ諸島と天皇海山列のお話を……

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カムチャッカ半島からほぼ南へ、北太平洋の海底に日本列島とほぼ同じ長さの海底山脈がある。この名前がまたふしぎで、「天皇海山列」というそうで……なんでこんな名前になったのかというと、この海山列を調査したのがロバート・シンクレア・ディーツというアメリカの海洋学者だったんですが(1954年のこと)この人が、なぜか、海山の一つ一つに日本の天皇の名前をつけたんですね。で、「天皇海山列」。「天皇海山群」ともいうそうですが……

北端は、カムチャッカ半島のすぐ東南で、ここにあるのが明治海山。あと、神武とか仁徳とか、ずらっと天皇の名前が並びます。ただ、その順序はでたらめで、むろん即位順とか関係なし。どっちみちならもうちょっときちんと付けてほしかったなあ……と。まあ、それはともかく、この天皇海山列は、沖縄と同じ緯度くらいでハワイ諸島の西に続く北西ハワイ諸島に連続します。なので、全体としてみると、天皇海山列と北西ハワイ諸島、ハワイ諸島は、「く」の字になった海底山脈を形成している。天皇海山列は海面下ですが、北西ハワイ諸島になると、環礁みたいに海面上に出てくるようになり、ハワイ諸島では完全な島になる。ハワイ諸島のいちばん東のハワイ島では、海抜4000m以上のマウナ・ロア、マウナ・ケアを形成……

この、海底のふしぎな盛り上がりはなに??……ということなんですが、これ、実は、ホットスポットと呼ばれるマグマの噴き出した跡がずらっと並んだものらしい。地球の表面は、「地殻」とよばれる岩石層で覆われていますが、海洋底の地殻と大陸の地殻は別構造で、大陸棚の先端のところで、海洋底プレートが大陸のプレートの下にもぐりこんでいる。海洋底プレートは、ゆっくりと大陸プレートに向かって動くので、マントル層を貫いて上昇してくるマグマのプリューム、ホットスポットも、相対的に海洋底プレートに対してスライドするので、その噴き出し跡が一列に並んで山脈になるのだと。

要するに、ぶ厚いマントルに対して薄い皮のような太平洋の海洋底プレートがスライドしていった跡に残されたのが、一列に並んだ天皇海山、北西ハワイ諸島、そしてハワイ諸島であるということのようです。なので、天皇海山列は、北にいくほど昔に噴き出した山で、南に行くほど新しい。北西ハワイ諸島、ハワイ諸島も、西にいくほど古く、東にいくほど新しい。そして、今現在、ホットスポットはハワイ諸島のいちばん東のハワイ島の東南東部分にあって、この部分のキラウエアは陸化して噴火を続け、さらに東の海底にはロイヒ火山(海底火山)が日々、高さを増している。

ロイヒ火山は、現在、海洋底からすでに3000mくらいにまで成長しているそうで、海面まであと1000mを切ったとか。ただ、この火山が海上に出て「島」となるのには、まだ1万年以上はかかるそうですが……ということで、北太平洋の海底に「く」の字を描く天皇海山列、北西ハワイ諸島、そしてハワイ諸島は、「地殻の旅」の動かぬ証拠(というか、動いた証拠?)……「く」の字に折れているのは、この部分で、なぜか海洋底プレートの移動方向が変わったことを示す。

いちばん古い明治海山(カムチャッカのすぐそば)ができたのが8500万年前で、「く」の字の屈曲点が4000万年前といいますから、天皇海山列を作ったプレートの動きは、4500万年の間に約4000kmを北へ旅したことになりますね。で、4000万年前になぜかハンドルを切って西に向かう。で、現在に至る4000万年の間に北西ハワイ諸島とハワイ諸島を形成した……じゃあ、4000万年前に、なにがあったんだろう……

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4000万年前は、第三紀の始新世ということで、大陸と海洋は、ほぼ現在に近いかたちにはなっていたようですが……インドが漂流の終わりにユーラシア大陸にぶつかってヒマラヤ山脈ができたのがこれより少し前の4500万年前らしいです。で、それまで温暖だった気候が寒冷化しはじめたのが4000万年前だとか……ただ、プレートの「方向転換」がなぜ起こったのかは、調べてみてもわかりませんでした。ぜったいなにかあったんだと思うのですが……

ということで、この項は、とりあえずここでおしまいということに……それにしても、8500万年をかけた「ホットスポットの旅」の現在形が、今、ハワイ諸島の東の海底で見られるというのは、なにか感動的な気持ちになります。地球は生きている……考えてみれば、われわれの知っている「地球」はその表面だけで、でっかい球体の大部分は未知の世界……その中に、ものすごいエネルギーを秘めて、現在も活動中……

この活動が、火山の噴火となり、また、地震や津波を引き起こすわけですが……考えてみれば、この間見た「愛知トリエンナーレ」のテーマの「揺れる大地」というのは、まさにこの地球の活動そのものだったということです。地球の表面に住んで、天下を取ったように錯覚している人間の側から見れば「揺れる大地」というのはただただ恐怖でしかありませんが、地球そのものから見るなら、それはやっぱりまことに純粋な「生命活動」なんでしょう……地球というこの惑星は、その独自のあり方で生きている……

ムーやアトランティスのお話は、現在の科学的見地から見れば取るに足りない「妄想」なのかもしれませんが、これを、私は、「人類文明が、<地球そのもの>に対してもう少し謙虚たれというメッセージ」と読んでみたいと思います。人間は、やっぱりこの地球という惑星の上に生きて、その「地球のいのち」の限定を本質的に受けている。われわれが「生きていること」自体が、すでに地球という大きな生命のうちにあって、その外に出ることは基本的にできない……

前項で、戸隠に登ったときに「海を感じた」と書きましたが、そのときに感じた「海」は、そういう意味で、まさに「ムーの呼び声」であり、また「ムーとしてあるもの」を実は支えている地球という生命そのものの声だったのかもしれない……震災や津波の被害はオソロシイのですが、そこにも、なぜか、私は「海の呼ぶ声」を感じます。この「日本」という地は、ハワイをはじめとする太平洋の島々とともに「ムーの今に現われた姿」なのかもしれないけれど、また、その特有の位置から、「ユーラシアの声」すなわち、大陸そのものの大きな呼び声も感じます……ふしぎなところだなあ……