![untergang_600v](https://soraebito.wordpress.com/wp-content/uploads/2014/02/untergang_600v.jpg?w=960)
階段を、下ってゆく
光源のない水色の光に満ちた階段を
どこまでも・どこまでも
いつまでも・いつまでも
下ってゆく
なんの音もしない
なんの臭いもない
水色の光に満ちた階段を
ただ
無限に
下ってゆく
時々、踊り場に
ガラスのドアが現われる
ドアの向こうは
デパートの売場のように
明るい光に照らされ
さまざまなものにあふれた
空間
そこを、人々が
たくさんの人々が
楽しそうに
行き交っている
だけど
このドアを開けてはいけない
心の中の声なき声
その声に従って
ただ
ひたすら階段を
下ってゆく
I descend the stairs filled with pale blue light with no source of light.
Forever to anywhere, Forever until when, I’m descending.
I hear no sound, I smell nothing.
I descend the stairs filled with pale blue light, endlessly.
A door of the glass sometimes appears in the landing.
There is space lighted up brightly like the sales floor of the department store in the other side of the door.
Various things overflow there.
Various people come and go there, and they all look like happy.
However, you must not open this door.
A voice in my mind says so with no sound.
I descend again the stairs according to that.
最近はあんまり見なくなりましたが……無限階段を無限に降りていく夢。昔はよく見ました。一段一段歩いて降りていくのもありましたが、多くの場合、スーと、魂だけになったように階段空間を等速度で滑り降りていく……まるでエレベータのように一定の速度で止まることもなく、ただひたすら無限に降りていきます。空間にはふしぎな水色の光が満ちているのですが、その光がどこからくるのかわからない。明るくもないが、暗くもない、空間がまんべんなく燐光を発しているような……そんな中を、ただただ、降りていきます……
心はあせって、なんとか止まって、のぼらなきゃならない……いや、そもそもこのおかしな空間から脱出しなきゃならない……と思うんですが、身体はまったくいうことをきかず、ひたすら降りていく……いや、身体というものがあるのかどうかもわかりません……そして、心のどこかで、この空間から出ることも、降りるのをやめることもできないんだということを知っている。しかし、やはり心はあせり、なんとかしてここから出なくてはならないと思う……この状態が、かなり長く続きます。
で、あるとき、はっと気がつくと、地上に出ています。そこで夢から覚めることもあれば……それはまだ夢の中で、お伊勢さんの森の前だったりする。どうして出られたのかわかりませんが、ああ、ようやくあの空間から解放されたとほっとする。あの空間は、やっぱり私の心の中にあったのかもしれません。そしてやはり、「無限に降りていく」ということが必要だったんだと思う。なにも得るものもなく、達成されるものもないわけですが……それでも、なぜか、「降りていく」ことは要る。どこまでもどこまでも降りることが……
時として、降りている途中に、踊り場の片側がガラス戸になっていることがある。ガラス戸の向こうには、光に照らされたにぎやかな光景……いろんな品物が並べられ、大勢の人が楽しそうに行き交う、まるでデパートの売場のような……そんな景色が、夢の中の夢のようにガラス戸の向こうにある……この戸をおせば、そこに入れる……しかし、なぜか、絶対に入ってはいけない……そういう声がきこえる。心の中に。私の心は、その声を聴き、強力な吸引力にうち勝って、さらに降りていく旅を続ける……
もし、誘惑に負けてあの空間に入っていたらどうなっていたんだろう……それは、もしかしたらさらなる夢幻の世界にさまよい、もう二度と出てこられなくなったかもしれない。わかりませんが……降りるときは降りる。それが、正解。
![untergang_kaisetu](https://soraebito.wordpress.com/wp-content/uploads/2014/02/untergang_kaisetu00.jpg?w=960)