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今日のehon:世界精神の落日(つづき)

ヘーゲル

世界精神……というと、やっぱりヘーゲルさん。哲学の世界にそびえる巨大な山……フツーに、読めません。ホンヤクしてあっても。『精神現象学』をずっと読んでますが、なんと一年に7ページしか進まない。これじゃあ、死んで生まれ変わってまた死んで……何回輪廻転生をくりかえしても読めない。なんでこんなにわからんのだろう……

ヘーゲルは、ナポレオンのことを、『世界精神がウマに乗ってる』と言ったそうですが、ナポレオンの台頭と失脚は、彼の哲学にかなり甚大な影響を与えたみたいですね……で、もう一人、ナポレオンにかなり深刻な影響を受けた方……あのベートーヴェン氏。分野は音楽ですが、なんかすごくヘーゲルと感じが似てます。年も近いみたいだし。

ベートーヴェンと思って調べてみましたら、二人はなんと、同じ年(1770)の生まれでした。没年も、ヘーゲルが1831年でベートーヴェンが1827年。二人の生涯はほぼぴったりと重なっております……ちなみにナポレオンは1769年生まれの1821年死去で、やっぱりほぼ重なる……この3人、「世界精神3兄弟」だ……すごい……担当分野はそれぞれ、思想、芸術、そして政治。

ナポレオン

「ヴェルトガイスト・ブラザーズ」(独英ちゃんぽん)で売り出したらどうか……というのは冗談ですが、19世紀の幕開けって、そんな感じだったんですね……で、この時代、日本はどうだったかというと、江戸時代も中期で、田沼意次はナポレオンが生まれた1769年に老中格(準老中)になってます。このあと、松平定信の寛政の改革が1787年~1793年。上の3人の青春時代ですね。

では、「新大陸」はどうかな? 調べてみると、アメリカの独立宣言が1776年で、これはヘーゲルとベートーヴェンが6才、ナポレオンが7つのときですね。アメリカも彼らと同時代人? いや、人ではないけれど、なにか「新しいこと」が西と東で同時にはじまったような……要するに、これが「世界精神の夜明け」ということになるのかもしれません。

そのあと、世界精神は、短いけれど豊かな「昼の時代」を迎えます。工業化による大量生産と植民地からの収奪を基盤にした市民社会の繁栄……19世紀初頭にナポレオンははやばやと舞台から去り、大英帝国が世界を席巻する中で、徐々にアメリカが頭をもたげてくる……19世紀の後半に入るとアメリカは南北戦争で国の基礎を固めるが、その頃、日本もやはり幕末で列強の体制に参入する準備を着々と整える。19世紀は、過去からの潮と未来からの風がぴったり合わさって「人類力」の加速度ベクトルが最高潮に達した、ある意味幸せな時代だったのかも。

では、「世界精神の落日」は……というと、やっぱり20世紀初頭、おそらく1911年くらいからではないだろうか……世界は、またたく間に2度の世界大戦に呑みこまれ、「世界精神の凋落」は決定的となる。しかし、人は、残滓のようなわずかな光芒にしがみつき、そのあがきはついに世紀を越えて今にまで至っている……長い、長~い「落日」は、はたしてどこまでつづくのでしょうか。