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愛知トリエンナーレふたたび/Aichi Triennale 2016

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10月23日、愛知トリエンナーレ2016の最終日。ずっと気になっていたんですが、いろいろあって行けず……あっというまに終わり……ということで、名古屋エリアだけでも見ておこうと、あわてて栄へ。朝から回れば、愛知県美術館、栄地区、名古屋市美術館、長者街地区の4会場は見られるだろうと。

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結果として、名古屋エリアの展示の8〜9割くらいは見られました。つかれた……こんなにがんばってアートめぐりをしたのはひさしぶりだ……

で、どうだったか、ということですが……実は、かなり期待していたんです。前回のトリエンナーレが、予想に反してすばらしかったので。まあ、「予想に反して」なんていうと怒られますが、前回は、実はそんなには期待していなかった。でも、いい展示が多かった。

どこに感激したのか……というと、やっぱり作家さんたちの姿勢かな。前回は、あのオソロシイ大震災と原発事故から間もなくだったので、会場全体が緊迫感に満ちていました。やっぱり、あれだけのできごとがあると、作家さんたちも、自分が作品をつくる意味を、かなり真剣にかんがえなくちゃならない。あのできごとを直接反映した作品でなくても、やっぱりそういう、自分をつきつめるという環境はあったんだと思います。

それは、見る方にも直接響いてきました。自分たちは、なにをやってるんだろう……自分たちのやってることの意味って、なんだろう……そういう、みずからへの問いかけみたいなものが会場全体から感じられて、けっこう緊迫感があった。

しかるに今回……三年しかたっていないのに、世の中、大きく変わりました。もう震災も津波も、原発事故さえ過去の話になっちゃって、オリンピックだのなんだのと……社会の格差はますます開き、世界中で戦争や難民が絶えないのに、日本人はもう、あのオソロシイできごとさえ忘れちゃったのでしょうか……沖縄と福島をカッコに入れて、われわれはどこに行こうというのか……

今回のトリエンナーレにも、その「忘却の女神」の力を強く感じました。「虹のキャラバンサライ」……うーん、あたりさわりのない、ふわふわとした夢のようなタイトルだなあ……人間って、すぐに忘れるんですね。で、目は空中に漂って、足はいつのまにか地を離れる……

そもそも、アートって、いったなんだろう……それを、アートをやる人は、片時も忘れてはいけないと思います。とくに、今のように、いろんなものがでてきて、アートといろんなものの境界があいまいになっちゃった時代には、もうアートなんてなくたっていいんじゃない? という疑問が当然のように出てきます。

業界に守られたり、いわんや商業ベースにのっかっちゃったりして、かろうじて存在を保てるようなものは、やっぱり不要なんでしょう。前回のトリエンナーレでは、地震に津波、そしてゲンパツという圧倒的な破壊力が、アートをやる人に、おまえがアートをやってる意味って、なんなの?と強く迫った。アーティストは、ややともすれば眠りにつく心をはねのけて、そのシビアな問いかけに答えなければならなかった。みんな、真剣に答えようとしていたと思います。そのすがすがしさは、たしかに胸に強く迫りました。

じゃあ、今回は……ということなんですが、今回の展示のなかで、いちばん私の心に残ったもの……それは、名古屋市美術館の地下常設展示室にあった、河口龍夫さんの「DARK BOX」でした。これはもう、ずいぶん昔の作品で(たしか、70年代からつくりつづけておられる。いろんな年代のDARK BOXがある)、常設展示だから、一応トリエンナーレとは無関係……なんでしょうが、この作品、ごろんと転がってるだけで、今回私が見たトリエンナーレの全作品に勝ってる……

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昔のアーティストって、こうだったんですね。見るからにウソくさい重金属のカタマリなんですが、なぜか、ゴン!と存在感がある。見る人の想像力にあまり頼らない。今の作品は、見る人に訴えかける秋波が強すぎるんじゃないか……共感を呼びたいのはわかりますが、アートなら、そこはぐっとガマンするところだろう……「見て、見て、スゴイでしょ!」というのはなんか夜の歓楽街みたいな……作品をつくる上でいちばんだいじなのは、「矜持」なのかもしれません。

そもそも、アートをつくる意味って、なんでしょう。崩壊しつつあるこの世界。地震にゲンパツ、イスラム国にトランプ……オソロシイものがゾロゾロでてくる今という時代にあって、アーティストはなんでアートをつくるのか……もう、そのギリギリのところまで戻って考えないと先はないなあ……そんな感じでした。